2018.10.21 Sunday
ロミオとジュリエット 12
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パリにいる結を気遣うため、私は結のiphoneに電話をした。
何度もかけたが、一度も出ない。
仕方なく、LINEで体調を気遣った。
「バレエの公演を休め」、と言ったことを、結に叱られた。
そのことも謝りたい。
結は、若くて可愛くて、私よりはるかに年下だと扱っていたが、世界で地位を確立した一流の芸術家なのだ。
差し出たことを言ってしまった。
体調に関しては、1回だけ、「大丈夫」と返事が来た。
その返事が返って来た時は、正直ほっとした。
オペラ座の公演情報を見ると、道ノ瀬結出演とあるから、無事なのだろう。
結を手放したくない。
いつもそばに置いておきたい気持ちが、私の中で大きくなっている。
しかし、私がそんな感傷に浸るのは1分1秒たりとも許されていないのも事実だ。
ヨーロッパの各国チーム同士のリーグ戦は続く。
1週間前は、結のいるフランスパリのチームだったが、今度はスペインチームだ。
うちのブラオミュンヘンが、世界第4位の経済規模なら、スペインは第1位である。
試合会場を埋める7万4000人超の大観衆、そしてテレビの前で試合を数億人のサッカーファンがかたずを飲んで見守っている。
その数億人の中に、おそらく結もいる。
スペインvsドイツ。
度々対戦する、ヨーロッパのサッカー大国同士の戦いは、当然、激戦が予想される。
我がブラオミュンヘンは、グループリーグの3試合を、スイス戦3−0、イタリア戦5−2 フランス戦0−0と2勝1分で勝ち上がって来た。
結の地元、フランスのラパリスも、ポルトガル戦2−0、ドイツブラオミュンヘン戦(0−0)、ロシア戦3−0と同じく2勝1分で1位突破している。
固い守備と、得点を量産できるストライカーのおかげだ。
監督は、自分の立てる戦略を体現化してくれる選手を育てるのも大事な仕事だ。
強靭で鋼のような肉体、2時間、延長すれば2時間半を走り抜ける心肺能力が必要だ。
選手に授けるため、トレーニング方法の他、解剖学、栄養学、心理学などありとあらゆる知識が必要なる。
私は、日々勉強に追われることになる。
秘書の小崎が言う。
「優秀な選手でも、作戦に使えなければ、監督は出場させないんでしょう?シビアな話ですよね。」
サッカー選手の花形は何といっても、点を取れる選手である。
当然、優秀な選手が多く選手層も厚くなる。
「同じようなタイプの選手ばかり並べても、しょうがないだろ。」
優秀でも出場出来ない選手は増えると言うことだ。
私の判断のために、作戦から外され、ベンチで飼い殺し状態になる選手だっている。
足りない戦力を補うため、他チームの選手を加入させ、今いる選手を放出することだって多々ある。
選手が希望しても、希望の移籍が成立するとは限らない。プロの世界はどこも厳しい。
選手たちは、ブラオミュンヘンにいる以上、私の作戦で闘うことになる。
「監督、選手も大変な思いをして出場しているわけですから、ここは一つご快諾いただけませんか。」
「何を?」
「例のヌード写真集です。」
「まだその話を、断っていないのか?」
「断るどころか、ブラオミュンヘン幹部も乗り気ですよ。ドイツ語版英語版写真集を作る準備も始まっています。ミケランジェロのダビデ像みたいなヌード期待する!だそうですよ。」
「おいおい、ダビデ像って正面フルヌードじゃないか。」
何を馬鹿な。
結の前以外で、脱いでたまるか。
「監督、あきらめて下さい。奇想社は、スポーツ関連の書籍がシェア日本一です。 あそこで採用してもらえば、日本国内での宣伝効果抜群なんですよ。
ブラオミュンヘンと奇想社の、双方トップが望んだ企画です。
監督が嫌だと言っても、通りません。あきらめて、腹くくってもらいますよ。」
「そこまで、話が進んでいるのか。」
「奇想社には、切れ者の記者がいるんですよ。諸橋氏とか言う。今回の写真集担当ではないのですが、是が非でもと、モデルに東郷監督を推した人です。」
「なんだって?!」
「監督、これ内々の通達なんですが、その諸橋氏、何か監督のスキャンダルネタ握っているらしいですよ。 なんですか、それ?」
「…。」
「週刊Bezの来週号に”それ”を掲載予定ですが、写真集をご快諾いただければ取り下げます、と連絡来ています。」
「諸橋氏は、私を恫喝するつもりか…。」
「金にしたいのでしょうが、週刊Bez、相当姑息と言うか。ハイエナ集団ですね。特に諸橋氏。」
私は東京のパーティ会場の駐車場で、諸橋に、結との関係を、嘘でもいいからあったことにしてくれ、礼はすると言われた。
諸橋は、私を金で買収しようとしたのだ。
拒否する証として、奴の名刺を踏みつぶした。
名刺を踏みつぶされては、メンツを100回潰されたに等しい。
結を食い物にし、諸橋は私を金で買おうとしたのだ、それくらいしてやらねば気が済まない。
「これは、報復か。」
さて、どうする東郷、脱ぐのか脱がないのか?!
パリにいる結を気遣うため、私は結のiphoneに電話をした。
何度もかけたが、一度も出ない。
仕方なく、LINEで体調を気遣った。
「バレエの公演を休め」、と言ったことを、結に叱られた。
そのことも謝りたい。
結は、若くて可愛くて、私よりはるかに年下だと扱っていたが、世界で地位を確立した一流の芸術家なのだ。
差し出たことを言ってしまった。
体調に関しては、1回だけ、「大丈夫」と返事が来た。
その返事が返って来た時は、正直ほっとした。
オペラ座の公演情報を見ると、道ノ瀬結出演とあるから、無事なのだろう。
結を手放したくない。
いつもそばに置いておきたい気持ちが、私の中で大きくなっている。
しかし、私がそんな感傷に浸るのは1分1秒たりとも許されていないのも事実だ。
ヨーロッパの各国チーム同士のリーグ戦は続く。
1週間前は、結のいるフランスパリのチームだったが、今度はスペインチームだ。
うちのブラオミュンヘンが、世界第4位の経済規模なら、スペインは第1位である。
試合会場を埋める7万4000人超の大観衆、そしてテレビの前で試合を数億人のサッカーファンがかたずを飲んで見守っている。
その数億人の中に、おそらく結もいる。
スペインvsドイツ。
度々対戦する、ヨーロッパのサッカー大国同士の戦いは、当然、激戦が予想される。
我がブラオミュンヘンは、グループリーグの3試合を、スイス戦3−0、イタリア戦5−2 フランス戦0−0と2勝1分で勝ち上がって来た。
結の地元、フランスのラパリスも、ポルトガル戦2−0、ドイツブラオミュンヘン戦(0−0)、ロシア戦3−0と同じく2勝1分で1位突破している。
固い守備と、得点を量産できるストライカーのおかげだ。
監督は、自分の立てる戦略を体現化してくれる選手を育てるのも大事な仕事だ。
強靭で鋼のような肉体、2時間、延長すれば2時間半を走り抜ける心肺能力が必要だ。
選手に授けるため、トレーニング方法の他、解剖学、栄養学、心理学などありとあらゆる知識が必要なる。
私は、日々勉強に追われることになる。
秘書の小崎が言う。
「優秀な選手でも、作戦に使えなければ、監督は出場させないんでしょう?シビアな話ですよね。」
サッカー選手の花形は何といっても、点を取れる選手である。
当然、優秀な選手が多く選手層も厚くなる。
「同じようなタイプの選手ばかり並べても、しょうがないだろ。」
優秀でも出場出来ない選手は増えると言うことだ。
私の判断のために、作戦から外され、ベンチで飼い殺し状態になる選手だっている。
足りない戦力を補うため、他チームの選手を加入させ、今いる選手を放出することだって多々ある。
選手が希望しても、希望の移籍が成立するとは限らない。プロの世界はどこも厳しい。
選手たちは、ブラオミュンヘンにいる以上、私の作戦で闘うことになる。
「監督、選手も大変な思いをして出場しているわけですから、ここは一つご快諾いただけませんか。」
「何を?」
「例のヌード写真集です。」
「まだその話を、断っていないのか?」
「断るどころか、ブラオミュンヘン幹部も乗り気ですよ。ドイツ語版英語版写真集を作る準備も始まっています。ミケランジェロのダビデ像みたいなヌード期待する!だそうですよ。」
「おいおい、ダビデ像って正面フルヌードじゃないか。」
何を馬鹿な。
結の前以外で、脱いでたまるか。
「監督、あきらめて下さい。奇想社は、スポーツ関連の書籍がシェア日本一です。 あそこで採用してもらえば、日本国内での宣伝効果抜群なんですよ。
ブラオミュンヘンと奇想社の、双方トップが望んだ企画です。
監督が嫌だと言っても、通りません。あきらめて、腹くくってもらいますよ。」
「そこまで、話が進んでいるのか。」
「奇想社には、切れ者の記者がいるんですよ。諸橋氏とか言う。今回の写真集担当ではないのですが、是が非でもと、モデルに東郷監督を推した人です。」
「なんだって?!」
「監督、これ内々の通達なんですが、その諸橋氏、何か監督のスキャンダルネタ握っているらしいですよ。 なんですか、それ?」
「…。」
「週刊Bezの来週号に”それ”を掲載予定ですが、写真集をご快諾いただければ取り下げます、と連絡来ています。」
「諸橋氏は、私を恫喝するつもりか…。」
「金にしたいのでしょうが、週刊Bez、相当姑息と言うか。ハイエナ集団ですね。特に諸橋氏。」
私は東京のパーティ会場の駐車場で、諸橋に、結との関係を、嘘でもいいからあったことにしてくれ、礼はすると言われた。
諸橋は、私を金で買収しようとしたのだ。
拒否する証として、奴の名刺を踏みつぶした。
名刺を踏みつぶされては、メンツを100回潰されたに等しい。
結を食い物にし、諸橋は私を金で買おうとしたのだ、それくらいしてやらねば気が済まない。
「これは、報復か。」
さて、どうする東郷、脱ぐのか脱がないのか?!
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