© fugo since 2018.9.1 ロミオとジュリエット 19 | 大人のためのBL物語

ロミオとジュリエット 19

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                     主人公東郷の邸宅




週刊Bezで、私が載った号が、わざわざ日本から国際航空便で送られて来た。
差出人は、週刊Bezの諸橋幸司。
謹呈のシールが貼られている。
結の所にも送ったのか。
結に電話をしたら、留守電になっている。舞台かもしくはリハ中か。
マネージャー楠本氏のナンバーを押す。

「楠本です。監督ですか!」

「この度は、週刊誌の件で、ご面倒をおかけし誠に申し訳なく思っております。週刊Bezそちらにも送られていますか?」

「監督…、どう責任取られるおつもりですか?」

「結のスポンサーさんは、何と?」

「道ノ瀬の所属するパリバレエ団は、まだコメントしていません。 しかし、一足早く雑誌が発売された、日本ではスポンサーはカンカンです。
パリバレエ団は、スターダンサーの結を放すわけにいかず、万が一にはCMの違約金を肩代わりする話も浮上しています。
損害賠償金は15億円とも言われています。」

「15億…。」

「道ノ瀬が、ここまで売れっ子になったのは、日本のスポンサーの力とバックアップが大きいのです。
関係各所へ何らかの謝罪がなければ、引退に追い込まれる可能性もあります。」

「結が、引退?」

「そうです!」

「スポンサーは、”虎の子の道ノ瀬結”を、あなたにキズモノされ、大恥かかされたのです。
東郷監督、あなたも、ブラオミュンヘンもただではすみませんよ。
パリバレエ団が違約金を肩代わりした場合、その賠償請求は当然、東郷監督とブラオミュンヘンに行きます。
東郷監督、あなたはサッカー界では、非常な名将だと伺っています。
100年に1人の逸材だとも伺いました。
道ノ瀬の所属するパリバレエ団も、ルイ14世からの400年の歴史を誇るのです。
今、その頂点に立つのが、道ノ瀬結なんです。
パリバレエ団の400年にも渡る歴史に、東郷監督あなたは、泥を塗ってくれたのですよ!」



私は、不覚にもスマホを手から滑らした。
床に、ガツンッと硬質な音が響いた。

サッカーの規約違反をした場合、1600〜2000万程度の高額罰金が待ち受けている。
それどころではなくなった。
結との恋の代償は、とてつもなく高くついた。

結が、引退…?
あれほど、バレエが好きな結が。人生のすべてをかけて来たと結は言った。


欧州クラブチームの決勝トーナメントで、ブラオミュンヘンは、初戦負けした。
これで、決勝トーナメント敗退が決定した。
主戦力のマルコがレッドカードで出場停止になっていたのは痛いが、敗因はなんて言ってもこの私にある。
今回の騒動で、私への求心力を欠いた。
ブラオミュンヘンは、優勝候補筆頭にあげられていたのにこのような結果に終わった。
まさかのトーナメント敗退となったブラオミュンヘンは、遠征先のスペインから戻って来た。
求心力を欠いた監督に選手は付いてこない。私は、辞任を視野に入れた。
試合で数回負けたくらいなら、辞任する必要はない。
しかし、今回の週刊誌騒動では、多額の損害賠償問題に発展する恐れが十分ある。
試合を途中で投げ出すわけにはいかないので、欧州クラブチームの決勝トーナメントの全試合を終えてからと決めた。
それが、たった1戦で終了してしまった。
あっけないものだ。
私のサッカー人生が、ここで終わるかもしれない。

試合後のインタビューでは、週刊紙騒動もあり、いつもにも増して記者が多い。
「監督、トーナメント敗退の要因はどうお考えですか?!」

「週刊Bezです。」
日本語に振り向いた。スポーツメディアばかりの中で、日本の週刊誌Bezが試合後インタビューまで出て来るのか!?

「週刊Bezの田中と申します。今日の直接敗因は何とお考えですか?やはりあのバレエダンサーの、」
私は、最後まで言わせなかった。

「責任はすべて、私にあります。8年、私が監督に就任した時と状況は同じです。
8年前、ブラオミュンヘンは2部リーグに落ちました。そこで副監督であった私に白羽の矢が立ったのです。
トレーニング内容を入れ替え、戦略を練り直した結果、好成績を収めることが出来ました。
3回の国内優勝も経験しました。しかし、もう私の作ったシステムは終わりです。
私自身がまいた種によって終焉することになります。」

「監督、今のご発言は監督辞任ということですか!?」

「監督!お答えください!」

「監督!!」

記者たちが大勢矢継ぎ早に質問を投げかけたが、私はインタビューコーナーから降りた。

週刊Bezの諸橋よ、満足か!?お前の望んだ私の転落が始まろうとしている。

「東郷監督、辞任!!!」の一報は、日独の全スポーツ紙一面で、新聞、ニュースでも取り上げられた。
ブラオミュンヘンのシュタイナー会長は、東郷監督を続投させる意向を示したが、
東郷監督は辞任の意志を固めていると書かれた。

そうだ、私は監督の地位を降りなければならない。
私が心血注いで育てて来た、ブラオミュンヘンの選手たち。
私はいつでも、全身全霊をかけて、サッカーを愛して来た。
サッカー監督への道をひたすら歩んで来た年月が走馬灯のように脳裏をよぎった。
私は、20歳で大怪我して、選手生命を絶たれた。
監督になるため、大学でトレーニング理論、解剖学、生理学、心理学、栄養学を勉強し、
ドイツ指導者A級ライセンスに合格した。
2部に落ちたブラオミュンヘンを1部に押し上げ、若手を多く育て起用した。
ドイツ国内優勝3回…、喜びも悲しみも分かち合った選手たち。
血を吐くような思いで築き上げて来たすべてを、一瞬にして失ってしまった。

私は、スタジアムの関係者駐車場に停めたベンツの中に、ひとりいた。
無言のままとめどなく涙が頬を伝って行くのを感じる。

そして、その日のうちに、私はブラオミュンヘンのシュタイナー会長に面会を申し込んだ。

東郷、辞任か?!ふたりの恋の行方に乞うご期待!

11月28日0時8分の拍手様
メッセージ感謝いたします。いつもお読み下さりありがとうございます。
この先、東郷と結はちょっと大変なことになります。
ぜひまた、お越しくださいね〜。



B L ♂ U N I O N

コメント

11月28日午前0時8分の拍手さま
拍手コメント感謝いたします。いつもお読みくださりありがとうございます。
これから、東郷と結はちょっと大変なことになります。
また、ぜひまたお越しくださいね〜。

  • 管理人フーゴ
  • 2018/11/28 09:43